飴の舐めどき

自主的にお菓子を食べることがほとんどないのですが、これは別にお菓子が好きじゃないというわけではなく、単にいつお菓子を食べればいいのかがよくわからないからなんですよね。
人がお菓子を食べているとき一緒に食べることはよくありますし、その時はお菓子美味しいな!!とも思えるんですけど、じゃあ自分一人で食べるとなるとどうすればいいのかがよくわからない。
そもそも食べ物に関心が薄いというのもあるし、ストレス発散したいならゲームやればいいっていうのが大きな要因なんだと思います。

高校生一年生のころ、女の子にノートを見せてあげたり課題を手伝ってあげたりなんかするとお礼としてお菓子をもらえることが定期的にあって、その時最も入手率が高かったのがキャンディでした。
一口で気軽に食べられるお菓子ですら食べどきがわからないのに、一度口に入れると数十分は口の中を占領する飴なんてどのタイミングで食べるのがベストなのか全くわからなくて、気がつくとカバンの中に10個近くの飴玉が貯まっているという惨状でした。
流石にいい加減食べなきゃな……と思い、また新たに飴をもらったついでに「いつも飴ってどのタイミングで食べてるの?」と聞いてみると、「普通に授業中とかに食べてるよー」との返答が。この学校、授業中の食事どころか本当はお菓子の持ち込みだってNGなのに……。
僕は結構真面目というか、怒られるのが嫌だからルールは無難に守っておきたいタイプなのでこの案は論外だろ、と最初は思いました。でも、入学してしばらく経ち気持ちも大きくなっていた頃だったので、ここらでルール違反の一つでもしてみるか、と万一にも先生にバレることがないよう入念に計画を立てた上で、授業中飴舐めチャレンジを実行することにしました。

まず重要なのが「どの授業の時に飴を舐めるのか」ということ。結構移動教室が多い学校だったので座席も授業によって違っていて、その中でも窓際の一番後ろが定位置だった数Ⅰの授業がベストであると判断しました。
さらに計画を実行する日も大切です。突然発言を求められるのが予測しうる中で一番恐ろしい事態ですが、その頃はちょうど定期テストが近づいてきた時期で、僕のクラスは他クラスよりも進みが早く日によっては完全自習になることも多かったので、この時を狙うことにしました。

さて、いよいよ計画実行の時がやってきました。ポケットに飴玉を忍ばせて教室へと赴き、授業開始直前に封を切り飴を口へと運びます。
授業開始直後、先生から「もうテスト範囲終わってるから今日は自習にするねー」とのひと言が!キタ!これで勝つる!!
……と、勝利を確信した直後、先生から続けてお言葉が。「じゃ、先生は後ろで仕事してるから質問あったら聞きにきてね」といい、こともあろうに僕の後ろの席に座ったのです。
先程窓際の一番後ろの席と言いましたが、これはあくまで“生徒が使う席の中では”一番後ろという話。実のところ僕の一つ後ろの席は空いていて、そこに先生が座ってしまったのです。

そうなってしまった以上、これまでの想定とは完全に別ゲーです。自習中という非常に静かな空間の中、真後ろに先生が座っているからにはほんの僅かに音を立てただけでも耳に届いてしまうリスクがあるので、飴舐めは一気にハードモードと化しました。
もともとビビリな性格ということもあり、緊張で乾き切った口では全く飴が溶けることなく、授業後には授業前とほとんど同じサイズの飴が口に残っていました。これ以降、授業中に何かを食べようと思ったことすらありません。

というわけで未だに飴をいつ食べていいのかの正解がわかっていないので、カバンの中には飲食店でもらった飴が常に複数入っています。哀れな僕を誰か助けてください。

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